拡散泳動
diffusiophoresis
媒質気体中に濃度勾配があるとき,気体中におかれた粒子は,分子量の大きいガス成分の拡散方向へ移動する。この現象が拡散泳動である。たとえば,水面から水蒸気が蒸発している場合,水蒸気の濃度は液面に近づくほど高くなっている。水蒸気が上方へ移動すると,圧力を一定に保とうとするために空気分子が下方に移動する。このとき水蒸気分子の質量は空気分子の質量に比べ軽いので,粒子は質量の大きい空気分子の濃度分布により下方に移動する。しかし,蒸発もしくは凝縮している液体表面近傍では,ステファン(Stefan)流れという流体力学的流れが同時に発生する。この流れの向きは蒸気の向きと同じ方向で,蒸発している液面では微粒子の液面への接近を妨げる。この場合,全圧が一定になるように蒸気の濃度勾配と反対方向にガスの濃度勾配が形成され,ガス分子は液面に拡散する。しかし,ガス分子は液面で凝縮されないから,拡散により運ばれるガス量を打ち消すように反対方向に流体力学的流れ,いわゆるステファン流れが生じる。この流れはガスの濃度勾配と逆方向となる。したがって,拡散泳動による粒子の運動の向きとは異なる。標準状態では空気中の水蒸気に対して,拡散泳動とステファン流れによる粒子の移動速度 $v_{\mathrm{D}}$ は,
$$
v_{\mathrm{D}} = -1.9\times 10^{-10} \left( \frac{\mathrm{d}p}{\mathrm{d}z} \right)
$$
なる実験式により求められる。ここで,$\mathrm{d}p/\mathrm{d}z$ は水蒸気の分圧 $p$ の勾配である。また,$v_{\mathrm{D}}$ と $\mathrm{d}p/\mathrm{d}z$ の単位はそれぞれ [m s-1] と [Pa m-1] である。
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拡散捕集
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