拡散係数
diffusion coefficient
ガス分子の熱運動による粒子への不規則な衝突は,粒子にブラウン運動と呼ばれる運動を起こす。粒子の運動方程式は,衝突で生じるランダムな方向をもつ加速度と,ストークス抵抗などの外力によって記述されるが,粒子群についてこの運動方程式を解くことは困難であるため,ブラウン運動による粒子(個数濃度 $n$)の挙動は通常,次の拡散方程式によって評価される。 $$ \frac{\partial n}{\partial t} = \nabla \cdot \left( D\nabla n \right) $$ この式中の $D$ は粒子のブラウン拡散係数で,次のストークス・アインシュタインの式で表される。 $$ D = \frac{C_{\mathrm{c}}kT}{3\pi \mu D_{\mathrm{p}}} $$ ここで,$C_{\mathrm{c}}$ はカニンガムの補正係数,$k$ はボルツマン定数,$T$ は温度,$\mu$ はガスの粘度,$D_{\mathrm{p}}$ は粒子径である。粒子の移動度 $B$($=C_{\mathrm{c}}/3\pi \mu D_{\mathrm{p}}$)を用いると,$D=BkT$ となり,$D$ は $kT$ が外力であるときの移動速度ともいえる。一方,乱流場での粒子の不規則な運動も,拡散現象として取り扱う場合が多く,この場合の拡散係数を,乱流拡散係数という。
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