吸光係数
extinction coefficient, absorption coefficient
一般に,ランバート・ベアの法則に従って光が減衰するとき,入射光強度を $I_{0}$,光路長を $L$ とするとき,透過光強度,$I$,は,
$$
\frac{I}{I_{0}} = e^{-\sigma L}
$$
で与えられる。この係数 $\sigma$ を吸光係数(absorption coefficient)と呼び,透過率 $T$ と吸光度 $Abs$ はそれぞれ,
\begin{cases}
T = \frac{I}{I_{0}} \\[7px]
Abs = -\log_{10} \frac{I}{I_{0}} = \frac{1}{\ln 10}\sigma L
\end{cases}
で定義される。
エアロゾルや懸濁液の粒子群を光が透過する場合,透過光は,入射光がそのまま直進する部分のことなので,入射光から失われる成分としては,粒子による光吸収成分だけではなく散乱によって直進方向から逸れる成分が含まれることに注意する必要がある。
粒子1個によって散乱,吸収される光のエネルギー [W] を,入射光強度 [W m-2](単位面積あたりの光エネルギー,フラックス)で除した量は面積の単位を有するので,これらをそれぞれ,粒子の散乱断面積,$C_{\mathrm{sca}}$,吸収断面積,$C_{\mathrm{abs}}$,と呼び,この和,
$$
C_{\mathrm{ext}} = C_{\mathrm{sca}}+C_{\mathrm{abs}}
$$
を粒子の消散断面積(減衰断面積)と呼ぶ。
消散・散乱・吸収断面積をさらに粒子の断面積で除した量をそれぞれ,消散係数(extinction coefficient),$K_{\mathrm{ext}}$,散乱係数,$K_{\mathrm{sca}}$,吸収係数,$K_{\mathrm{abs}}$,と呼ぶ。粒子径が入射光の波長より十分に大きく,かつ,粒子の光吸収が大きいフラウンホーファー領域では,粒子投影断面積分の入射光が全て粒子に全て吸収され,バビネの原理により粒子断面積への入射光に等しい量の光が回折によって散乱されるので,
$$
K_{\mathrm{sca}}=K_{\mathrm{abs}}=1,~~K_{\mathrm{ext}}=2
$$
となる。
粒子群の吸光係数は濁度,光学濃度とも呼ばれる。粒子径 $x$ の粒子の個数密度関数が $n(x)$ で与えらえれているとき,多重散乱が無視できる粒子濃度範囲で,吸光係数は,
$$
\sigma = \int_{0}^{\infty} n(x)C_{\mathrm{ext}}(x)\mathrm{d}x
$$
で与えられる。
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ランバー卜・ベアの法則
- 2021/06/19 松山達(創価大学)
- 2021/06/19 『粉体工学用語辞典 第2版』web化入力
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