急速凝集
rapid flocculation
液相中のコロイド粒子は一般に帯電しており,その帯電量が十分大きい場合,粒子は互いに反発し分散し,コロイド分散系を形成する。これに電解質を添加すると,表面帯電は添加濃度に応じて遮蔽され,粒子間反発力が小さくなり,粒子の凝集速度が増加する。このように凝集速度は電解質濃度とともに増加するが,電解質濃度が限界凝集濃度以上になると,最大値をとり電解質濃度にかかわらず一定となる。この領域では静電反発力の影響が消失し,粒子は衝突するとファンデルワールス力により必ず凝集する。限界凝集濃度以上の領域での凝集を急速凝集と呼び,それ以下の濃度領域での遅い凝集を緩速凝集と呼ぶ。(急速凝集速度)/(緩速凝集速度)の比を安定度定数 W と定義し,分散系の安定性の指標として用いられる。W = 1 のとき急速凝集,W > 1 のとき緩速凝集となる。球形粒子間の急速凝集速度はスモルコフスキー理論より求めることができるが,この理論には粒子間流体力学的相互作用の影響が考慮されていないことに注意する必要がある。
→ 緩速凝集,コロイド分散系,帯電(液相中),限界凝集濃度
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