粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

キンチの理論

Kynch's theory

 G.J.Kynch(1952 年)が導いたスラリーの回分沈降理論。キンチは,希薄固体濃度の均質スラリーを対象に,界面沈降速度が固体濃度の関数であるとして沈降過程を理論的に解析した。すなわち沈降中に沈降管底部には沈殿圧縮層が形成され,次第に高さを増していく。沈殿圧縮層内の任意の等濃度層は,底部から清澄液—スラリー界面まである一定速度で上昇するので,この伝播速度を考えることにより,仕込濃度から沈殿圧縮層濃度に至る任意の固体濃度における沈降速度が求められるとした。すなわち,回分沈降曲線の臨界点から圧縮点までの範囲における任意の点で曲線に接線を引くと,固体濃度は C = C0 H0/H' より,また沈降速度は v = H'/t' より求めることができる。ここで,C0,H0 はそれぞれスラリーの仕込濃度および初高であり,H',t' はそれぞれ接線の縦軸および横軸との交点である。この理論はシックナーの所要面積を求めるのにも用いられる。たとえば,一連の濃度対沈降速度の関係を利用する Coe-Clevenger 法,および沈降曲線を用いて直接作図を行う方法である Talmage—Fitch—Oltmann 法がある。

→ 沈降曲線シックナー沈殿濃縮

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/8/30

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