粉粒体層や多孔質固体内の拡散における内部空隙の拡大縮小，屈曲などの細孔構造の影響を総括的に考慮するための補正係数で，屈曲度，経路係数，迷路係数，迷宮度ともいう。
　空隙率 $\varepsilon$ をもつ粉粒体層や多孔質固体の気相拡散では有効拡散係数 $D_{\mathrm{e}}$ を次式で表わし，このときの $\mu$ を屈曲係数として定義する。 $$ D_{\mathrm{e}} = \frac{\left( \varepsilon/\mu \right)}{\frac{1}{D}+\frac{1}{D_{\mathrm{k}}}} $$ ここで，$D$ は分子拡散係数，$D_{\mathrm{k}}$ はクヌーセン拡散係数で，細孔径が気体分子の平均自由行程に比べて十分に大きい場合には $(1/D_{\mathrm{k}})$の項が，クヌーセン拡散領域では $(1/D)$ の項が無視できる。
　また，屈曲係数は多孔質内の拡散や流動において，拡散または流動の見かけ上の距離 $L$ と屈曲した細孔内を実際に移動する距離 $\ell$ の比として， $$ k = \frac{\ell}{L} $$ としても定義され，ねじれ率とも呼ばれている。
　多数の円管を並列に束ねた細孔構造を仮定するパラレルポアモデルによれば $\mu = k^{2}$ の関係となるが，屈曲係数をしてどちらを用いるかはその都度定義される。

→　 有効拡散係数， クヌーセン拡散