クヌーセン拡散
Knudsen diffusion
真空下での拡散では,気体分子の存在が希薄になるため分子の平均自由行程 $\lambda$ が長くなって分子同士の衝突なしに直接飛行する分子による拡散が行われるようになる。このため拡散は,分子相互の衝突が大きな影響をもつ常圧付近での拡散とは全く異なった機構によるものとなる。このような拡散をクヌーセン拡散という。
平均自由行程 $\lambda$ と細孔径などその拡散系の代表長さ $D$ との比で定義されるクヌーセン数 $Kn=\lambda/D$ がおよそ 0.01 以下の領域では,分子間の衝突が支配的であり気体は連続体とみなせ,通常の分子拡散係数が意味を持つが,$Kn$ が 10 近く,あるいはそれ以上になると,気体分子間の衝突より分子と拡散系周囲の細孔壁などとの衝突頻度がはるかに大きくなり,気体は連続体としての性質を失いクヌーセン領域となる。クヌーセン領域における半径 $r$ の細孔内の拡散係数には次式で表わされるクヌーセン拡散係数 $D_{\mathrm{k}}$ が用いられる。
$$
D_{\mathrm{k}} = \frac{2r}{3}\sqrt{\frac{8RT}{\pi M}} = (3.067\ \mathrm{J^{\frac{1}{2}}\ mol^{-\frac{1}{2}}}\ K^{-\frac{1}{2}})\,r\sqrt{\frac{T}{M}}
$$
ここで,$D_{\mathrm{k}}$と $r$ の単位はそれぞれ [m2 s-1] と [m] で,$T$ は絶対温度 [K],$M$ は拡散分子の分子質量 [kg mol-1] である。
→ クヌーセン数, 平均自由行程
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