結晶化速度
rate of crystallization
結晶化の速度には,核発生速度と成長速度が含まれる。核発生速度は過飽和溶液(過冷却融液または過飽和状態の固体を含む)の単位体積,単位時間当たりに発生する結晶核の数で表わされる [m-3 s-1]。液系では一般に,一次核化速度の記号 $J$,二次核化速度の記号は $B$ で表わされるが,単位は同じである。一次核化速度は溶液の飽和比を $S$(=溶液濃度/飽和濃度)とすると古典的な理論より,
$$
J = C\exp \left( -\frac{16 \pi \gamma^{3}\nu^{2}}{3k^{3}T^{3}(\ln S)^{2}} \right)
$$
が導かれる。ここで,$\gamma$ は界面エネルギー [J m-2],$\nu$ は分子容 [m3],$k$ はボルツマン定数 [J K-1],$C$ [m-2 s-1] は定数である。これに対して,二次核化速度は経験的に次の相関式で表わされる。
$$
B = KN^{a}\sigma^{b} M_{\rm{T}}
$$
ただし,$M_{\rm{T}}$ [kg m-3] は結晶粒子の懸濁密度,$N$ [s-1] は攪拌翼の回転速度,$\sigma\,(\equiv S-1)$ [-] は過飽和比(過飽和度)である。$K$ は実験定数で,装置の形状や材質および系の物性などにより決まる。結晶の成長速度としては,結晶の(hkl)面の前進速度($G_{\rm{hkl}}$ [m s-1]),結晶粒子の代表径 $L$ の増加速度(=線成長速度:$G'=\rm{d}L/\rm{d}t$ [m s-1]),または結晶質量の増加速度($\rm{d}W/\rm{d}t$ [kg s-1])が用いられる。これらの間には一般的に次の関係がある。
$$
G_{\rm{hkl}} \approx \frac{1}{2}G',\;\; \frac{1}{A}\frac{\rm{d}W}{\rm{d}t}=3\phi \rho_{\rm{s}} G'
$$
ただし,$A$ [m2] は結晶の表面積,$\rho_{\rm{s}}$ [kg m-3] は結晶の密度,$\phi$ [-] は結晶粒子の形状係数(≡体積形状係数/面積形状係数)である。
成長速度は,物質移動速度と表面集積速度および伝熱速度の三つの速度過程からなる。物質移動と伝熱速度については通常の無次元相関式が適用できる。表面集積過程の速度に関しては,二次元核化やら旋転移による機構などいくつかの理論式が提出されているが,工学的には,過飽和度の関数として次式が用いられている。
$$
G'=k_{\rm{G}}\sigma^{g}
$$
ここで,$k_{\rm{G}}$ は成長速度係数 [m s-1] で実験的に求まり,一般にArrhenius式で整理される。また過飽和度への依存性は一般に $b>g$ である。
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