粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

結晶多形

polymorphism

 同一の化学組成を有する化合物で,結晶構造の異なるものを結晶多形という。同一元素での多形としては,ダイヤモンドとグラファイトの例がよく知られている。一定温度,圧力のもとで,安定な結晶構造をとるものを安定形または安定相といい,不安定な結晶構造をとるものを準安定形または準安定相という。これらは互いに転移し,これを多形転移(polymorphic transformation)という。転移が可逆的な場合を,互変形(enantiotropy),準安定形から安定形への非可逆的転移を単変形(monotropy)という。結晶多形は,各結晶形により,融点,密度,溶解度溶解速度が異なる。準安定形の結晶は,安定形より溶解度や溶解速度が大きいので,難溶性薬物の製剤化に有用であるが,安定形への転移に注意をする必要がある。バルビツール酸誘導体,スルホンアミド,リボフラビン,ステロイド,カカオ脂など多くの有機化合物が多形をもつ。結晶多形の存在は,X線回折法,赤外線吸収スペクトル法,熱分析法,偏光顕微鏡法などによって確認できる。なお,溶媒和物を疑似多形と呼ぶことがある。

→ 非晶質

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/9/16

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