スモルコフスキー理論
Smoluchowski theory
単分散粒子分散系のブラウン運動による凝集過程に対し,スモルコフスキーが 1917 年に発表した理論である。粒子は相互作用のない球形粒子で,衝突した二粒子は瞬時に合一し同体積の球形粒子になることを仮定している。$i$,$j$ 次粒子間の凝集速度定数 $k_{ij}$ は,$i$ 次粒子への $j$ 次粒子の拡散過程を解くことにより,$k_{ij}=4 \pi D_{ij} R_{ij}$ と導出されている。$D_{ij}$ は $i$,$j$ 次粒子間の相対拡散係数($D_{ij}=D_{i}+D_{j}$,$D_{i}$ は $i$ 次粒子拡散係数で粒径に反比例),$R_{ij}$ は凝集半径($R_{ij}=a_{i}+a_{j}$,$a_{i}$ は粒子半径)である。これを,下記の $k$ 次粒子濃度 $n_{k}$ の収支式に導入し,すべての次数の粒子に対して連立して解くと,粒子径分布(粒度分布)の経時変化が推定できる。
$$
\frac{\mathrm{d}n_{k}}{\mathrm{d}t} = \frac{1}{2} \sum_{\substack{i=1\\i+j=k}}^{i=k-1} k_{ij}\,n_{i}\,n_{j} - \sum_{i=0}^{\infty} k_{ik}\,n_{i}\,n_{k}
$$
凝集初期段階のように,$a_{i}$,$a_{j}$ があまり大きく違わない場合,
$$
D_{ij}R_{ij} = D_{1}a_{1} \left( \frac{1}{a_{i}+\frac{1}{a_{j}}} \right) \left( a_{i}+a_{j} \right) ~\approx ~ 4D_{1}a_{1}
$$
となり,時間 $t$ での全粒子濃度 $N_{\mathrm{T}}$ と $n_{k}$ はそれぞれ次式で与えられる。
$$
N_{\mathrm{T}} = \frac{n_{0}}{1+\frac{t}{t_{1/2}}}
$$
または,
\begin{align}
\frac{1}{N_{\mathrm{T}}}-\frac{1}{n_{0}} = \frac{t}{n_{0}t_{1/2}} \\[6pt]
n_{k} = n_{0} \frac{(t/t_{1/2})^{k-1}}{(1+t/t_{1/2})^{k+1}}
\end{align}
ここで,$n_{0}$ は初期粒子濃度,
$$
t_{1/2} = \frac{1}{8 \pi D_{1}a_{1}n_{0}}
$$
は粒子濃度が半減する時間である。拡散係数がアインシュタインの式
$$
D_{1}=\frac{kT}{6 \pi \mu a_{1}}
$$
(ここで,$k$ はボルツマン定数,$T$ は温度,$\mu$ は媒体粘度)で表わされる場合,
$$
t_{1/2} = \frac{3 \mu}{4kTn_{0}}
$$
となり,$N_{\mathrm{T}}$ ,$n_{k}$ は粒径には依存しなくなる。$(1/N_{\mathrm{T}})~\text {vs.}~t$は直線関係になるので,実験データが本理論で表わせるかどうかの検討に用いられる。
→ ブラウン運動, 凝集, 凝集定数, 拡散係数
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