中条の式(Alyavdin-中条の式)
Chujiyo's equation (Alyavdin-Chujyo's equation)
中条金兵衛と旧ソ連の Alyavdin とにより 1930 年代に独立に見いだされた,ボールミルによる粉砕過程を表す経験式である。着目する粒子径を任意の一定値 $x_{0}$ に固定して,粉砕時間 $t$ に応じた質量基準(または体積基準)のふるい上積算分率(篩上積算分率)$R(x_{0})$ を追跡すると,
$$
R(x_{0}) = \exp {\{ -at^{n} \}} \tag{1}
$$
で表されるとする。ここで,$t$ は時間,$a$,$n$ は定数である。時間項は積算消費エネルギー $E$ で置き換えて以下としてもよい。
$$
R(x_{0}) = \exp {\{ -a'E^{n} \}} \tag{2}
$$
この式は,ロジン・ラムラー分布,
$$
R(x) = \exp {\{ -Kx^{m} \}} \tag{3}
$$
の定数 $K$ を $K = bt^{n}$ で置き換えた,
$$
R(x,t) = \exp{\{ -bx^{m}t^{n} \}} \tag{4}
$$
に等しい。従ってこの式は,ボールミル粉砕過程では,粒子径分布はロジンラムラー分布を維持しながら徐々に小粒子径側にシフトして行くことを意味している。
後に中島・田中[1]は,選択関数を,
$$
S(x) = A x^{p},~~~ p \approx 1 \tag{5}
$$
とし,破壊関数を,
$$
B(y,x) = \left( \frac{y}{x} \right)^{q},~~~ q \approx 1 \tag{6}
$$
とするとき,粉砕速度式から,中条の式を近似的に導出できることを示した。以下,結論だけを述べると,
- $p = q$ のとき,以下のような単純なロジンラムラー式になる。
$$ R(x,t) = \exp {\{ -Ax^{p} t \}} \tag{7} $$
- $p \ne q$,$p/q \approx 1$ のときは以下となる。
$$ \frac{R(x,t)}{R_{0}(x)} \approx \exp{ \{- \left( \beta A x^{p} t \right)^{\alpha} \} } \tag{8} $$ただし,$R_{0}(x)$ は初期条件,$\alpha$ と $\beta$ は $p/q$ で定まる定数である。
加えて,文献では,$(8)$ 式において発生する以下のような矛盾についても詳述し,使用上の注意を喚起している。
即ち,いま分布が $R_{0}(x)$ の原料を $(t_{1}+t_{2})$ の時間だけ粉砕するとして,(1) このミルを止めずに連続して粉砕を行ったとすれば,最終的に得られる分布は,
$$
R(x, t_{1}+t_{2}) = R_{0}(x) \exp{ \{- \left( \beta A x^{p} \right)^{\alpha} \cdot \left( t_{1} + t_{2} \right)^{\alpha} \} } \tag{9}
$$
となる。これに対して,(2) $t_{1}$ 時間粉砕して一旦ミルを止め,できた製品をそのまま原料として更に $t_{2}$ 時間同一のミルで粉砕したとすると,最終的に得られる分布は,
\begin{align}
R(x, t_{1}+t_{2}) &= R_{0}(x) \exp{ \{- \left( \beta A x^{p} t_{1} \right)^{\alpha} \}} \cdot \exp{ \{- \left( \beta A x^{p} t_{2} \right)^{\alpha} \} } \\[10pt]
&= R_{0}(x) \exp{ \{- \left( \beta A x^{p} \right)^{\alpha} \cdot \left( t_{1}^{\alpha} + t_{2}^{\alpha} \right) \} } \tag{10}
\end{align}
となることになる。この $(9)$ 式と $(10)$ 式の($\alpha \ne 1$ の場合に生じる)矛盾は,$(8)$ 式を誘導するのに用いた近似に起因する。したがって,例えばチューブミルを何段かに分割して考察する必要が生じたような際には,近似式は十分に注意して使わなければならない。
【参考文献】
- 中島耀二,田中達夫,「粉砕方程式の解析解について」,粉砕,No.19 (1974) pp.2-11
【更新履歴】
- 2022/02/10 松山達(創価大学)
- 2021/06/09 『粉体工学用語辞典 第2版』web化入力
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