電気泳動
electrophoresis
液中で帯電した粒子を外部電場 $E$ の下におくと,粒子は表面電荷の符号に応じて正極または負極に移動する。定常状態では粒子に働くと粘性抵抗力(粘度 $\mu$)が釣り合って等速で運動し,この泳動速度 $v$ から粒子のゼータ電位 $\zeta$ を求められる。これは粒子半径 $a$ と電気二重層厚み $(1/\kappa)$ の相対関係や粒子形状により異なる表式となるが,たとえば $\kappa a \ll 1$ の球粒子の場合には,媒体の誘電率を $\varepsilon$ として,
$$
v = \frac{\varepsilon \zeta E}{1.5\mu}
$$
となり(ヒュッケルの式),逆に $\kappa a \gg 1$ では粒子形状によらずこの 1.5 倍の値となる(スモルコフスキーの式)。さらに両者を連続的につなぐ関係が提案されている(ヘンリー関数)。前者の場合,広く分布する対イオンの雰囲気が,電界の効果で粒子と逆方向に移動するために泳動速度が後者の場合よりも低下するものと考えられ,これを遅延効果と呼ぶ。このほか,電場中を移動する粒子の前面でのイオン雰囲気形成が遅れて非対称になることで,泳動中の粒子が逆方向の力を受ける緩和効果も,ゼータ電位が大きく $\kappa a$ が中間的な値の場合には考慮すべきであることが知られている。
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顕微鏡電気泳動法,表面電位
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