動的過圧力,動的過加重
dynamic overpressure
サイロなど粉粒体貯槽から貯蔵物を排出する間に発生する動的な圧力変動のことで,一般に深槽(deep bin)型の貯槽から排出する場合,貯槽内粉体圧は静置時の粉体圧力値から急激な圧力変動を示す。このサイロからの排出時や攪拌時の貯槽内の動的圧力変動を動的過圧力という。1963 年,A.M.Turitzin は,貯槽内粉体圧に関する現存する理論と実験データを集大成して発表した。彼はその論文中で,実大サイロまたは模型サイロから粉体を排出する際に発生する過圧力(over pressure)に対して「動的過圧力」と名づけた。
排出時の動的過圧力の発生は,単なる貯槽内の局部的な粉粒体のアーチの形成や,その崩壊にともなう衝撃的な過圧力の発生によるものではなく,貯槽内の粉粒体の基本的な流動パターン(flow pattern)が形成されることによる恒常的な現象であると考えられている。
一般に排出時の流動パターンの形成は,粉粒体の流動特性によるものと,貯槽の排出口位置,排出速度(単位時間中の排出量),ホッパー角度などサイロの幾何学的な形状に起因するものと考えられる。A.W.Jenike らは,基本的な流動パターンとして二つを示している。それは「マスフロー」と「ファネルフロー」である。
1995 年 6 月に発行された ISO 11697 によれば,サイロの設計用粉体圧力の算定にあたっては,貯槽からの排出圧力は排出時の流動パターンに影響されるので,貯槽内の粉粒体の流動パターンの事前の評価を行うようにしている点に特徴がある。一般に各国の貯槽設計規準では,動的圧力に対する設計圧力はヤンセン式などにより算定した静的圧力に対する動的圧力値の比としての動圧係数(overpressure correction factor)という形で示されている。
排出時の動的過圧力の発生は貯槽形状にも大きく起因しており,貯槽壁に作用する粉体圧の挙動は,特に貯槽内の突出物や挿入物の影響は大きく,また排出口が偏心しているもの,排出方法が特殊なものなどに大きく影響され,圧力増大が非常に大きい。
→ 動的圧力係数,マスフロー,ファネルフロー
【広告】