内部蒸発圏モデル
internal evaporation zone model (on drying)
湿り材料の乾燥においては,表面蒸発期間が終わったのちに蒸発が材料内部で起こる内部蒸発期間へ移行する場合も多い。このとき,深さ方向のある点で蒸発が起こる場合と,ある領域内で起こる場合があり,それらが乾燥の進行とともに内部へ進行する。後者の工学モデルを内部蒸発圏モデルといい,蒸発の起こる領域を内部蒸発圏という。圏内における蒸気流束は次式で与えられる。 $$ S \left( \frac{D}{q} \right) \left( \frac{\mathrm{d}p}{\mathrm{d}x} \right) \tag{1} $$ ここで,$D$ は蒸気の拡散係数,$q$ は屈曲係数,$p$ は水蒸気分圧である。$S$ は固—液—気の三相よりなる湿り材料内で,気相が占めている分率である。圏内における蒸気分圧の経時変化は,時間を $t$ として次式で求められる。
$$
S \left( \frac{\mathrm{d}p}{\mathrm{d}t} \right) = \left( \frac{D}{q} \right) \left( \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}x} \right) \left( \frac{S\mathrm{d}p}{\mathrm{d}x} \right)
+ k_{\mathrm{w}}a(p_{\mathrm{w}}-p) \tag{2}
$$
右辺第1項は蒸気流束の変化に基づく蓄積の項,第2項は圏内における水の蒸発項である。$a$ は,材料単位体積当たりの気液界面積,$k_{\mathrm{w}}$ はその界面における物質移動係数で内部蒸発係数と呼ばれており,これらの値は実験で定める。また $p_{\mathrm{w}}$ は飽和水蒸気圧である。材料内における熱と液状水の収支式および式 (2) を連立させて解くことで,減率乾燥期間における水分分布や乾燥速度を推算できる。
→ 蒸発面後退モデル,平衡含水率
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