ナノコンポジット磁石
nanocomposite magnets
磁石材料の最も重要な特性は,磁気エネルギー積((BH)max)であり,残留磁束密度と保磁力を高くすることが,高性能磁石材料を得るための必要条件である。一般に,希土類磁石の分野において,数十 nm オーダーの粒子径を有する軟磁性結晶粒(αFe や Fe2B,Fe3B などを 40 ~ 85 % 程度含む)と硬磁性結晶粒(Nd2Fe14B1 型や Sm2Fe17Nx 型)とが複合化した組織を有する合金は,ナノコンポジット磁石または,交換スプリング磁石(exchange spring magnet)と呼ばれている。この名称の由来は,保磁力の低い軟磁性結晶粒の磁化が,保磁力の高い硬磁性結晶粒の磁化と交換相互作用によって磁気的に結合し,減磁界によって軟磁性結晶粒の磁化が反転しても,減磁界をゼロにするとばねのように元に戻る性質が働き,あたかも各結晶粒の磁化がスプリングでつながれているような振る舞いを行うことに基づく。その結果,残留磁束密度が高く保磁力も比較的大きい永久磁石合金が得られ,ボンド用磁石材料としての用途が期待されている。製法は,Nd-Fe-B,Sm-Fe-N 系において,急冷法やメカニカルアロイング法による検討が行われているが,溶融状態から超急冷してアモルファス合金を生成したあと,熱処理による結晶化が行われる急冷法が主流である。
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