ネルンスト型帯電
Nernst type charging
液中の固体表面の帯電がイオンの吸着による場合,固体表面上とバルク溶液中のイオン間には平衡が成立し,電気化学ポテンシャルは等しくなる。イオンは価数 $z$ の陽イオン $\mathrm{M}^{+z}$ とすると次式が成立する。
$$
{\mu^{0}}_{\mathrm{s}}(\mathrm{M}^{+z}) + kT\ln[a_{\mathrm{s}}(\mathrm{M}^{+z})]+ze\phi_{\mathrm{s}}=
{\mu^{0}}_{\mathrm{b}}(\mathrm{M}^{+z}) + kT\ln[a_{\mathrm{b}}(\mathrm{M}^{+z})]+ze\phi_{\mathrm{b}}
$$
ここで,$\mu^{0}$ は標準状態の化学ポテンシャル,$k$ はボルツマン定数,$T$ は温度,$a$ は活量,$e$ は電気素量,$\phi$ は電位,添字 $\mathrm{s}$ は固体表面,$\mathrm{b}$ はバルク溶液を表わす。上式は $\phi_{\mathrm{s}}=\phi_{\mathrm{b}}$ となる電荷零点($\mathrm{pzc}$)でも成立し,$a_{\mathrm{s}}(\mathrm{M}^{+z})={a_{\mathrm{s}}}^{\mathrm{pzc}}(\mathrm{M}^{+z})$ が仮定できる場合,電荷零点に対する式を上式から差し引くと,両相間の電位差(表面電位)$\psi = \phi_{\mathrm{s}}-\phi_{\mathrm{b}}$ が導出される。
$$
\psi = \phi_{\mathrm{s}}-\phi_{\mathrm{b}}
= \frac{kT}{ze}\ln \left[ \frac{a_{\mathrm{b}}(\mathrm{M}^{+z})}{{a_{\mathrm{b}}}^{\mathrm{pzc}}(\mathrm{M}^{+z})} \right]
$$
ここで,添字 $\mathrm{pzc}$ は電荷零点での値を示す。$a_{\mathrm{s}}(\mathrm{M}^{+z})={a_{\mathrm{s}}}^{\mathrm{pzc}}(\mathrm{M}^{+z})$ の仮定は,$\mathrm{AgI}$ のような結晶性粒子のように,表面に $\mathrm{Ag^{+}}$,$\mathrm{I^{-}}$ が多く吸着しており,バルク中の濃度を少し変えても,表面上の濃度はあまり変わらないが,表面電位は $\mathrm{Ag^{+}}$,$\mathrm{I^{-}}$ の少量の過不足で決まる場合に有効である。
このような条件下で導かれた上式をネルンストの式と呼ぶ。ネルンスト型帯電する粒子として,正負二種類のイオンからなる $\mathrm{AgBr}$,$\mathrm{AgCl}$,$\mathrm{Ag_{2}S}$,$\mathrm{AgCNS}$,$\mathrm{BaSO_{4}}$などがある。たとえば $\mathrm{AgI}$ ゾルの場合,次のように表わされる。 $$ \psi = -\frac{2.3RT}{F}\left( p\mathrm{Ag}-p\mathrm{Ag^{pzc}} \right) $$ ここで,$R$ は気体定数,$F$ はファラデー定数,$p\mathrm{Ag^{pzc}}$ は $\mathrm{AgI}$ 粒子の電荷零点である。
→ 電荷零点, 帯電, 表面電位
【広告】