フックスの凝集定数式
Fuch's coagulation rate equation
ガス中の微粒子のブラウン運動による凝集現象,すなわちブラウン凝集による凝集定数は,粒子の $Kn$ 数,
$$
Kn = \frac{2\lambda}{D_{\mathrm{p}}}
$$
($\lambda$:媒体の平均自由行程,$D_{\mathrm{p}}$:粒子直径)の値により,その導出過程が異なる。$Kn$ 数が非常に小さい連続領域($Kn \lt 0.01$)では,凝集定数は Smoluchowski による拡散理論より求められる。一方フックスは,$Kn$ 数の非常に大きい自由分子領域($Kn \gt 10$)での凝集定数式を,希薄ガスの分子運動論より導出し,また $Kn$ 数が $0.01 \lt Kn \lt 10$ の範囲,すなわち遷移領域では,拡散理論を拡張して凝集定数を求めた。この式は,実験結果とよく一致することよりフックスの式と呼ばれている。
フックスは,図に示すように直径 $D_{\mathrm{p}i}$ の粒子に直径 $D_{\mathrm{p}j}$ の粒子が凝集するとき,衝突直径 $D_{\mathrm{p}ij}~(=D_{\mathrm{p}i}+D_{\mathrm{p}j})$ の外側に,平均自由行程 $\lambda$ の関数である厚さ $\delta$ なる領域を考え,この $\delta$ の外側では粒子はブラウン拡散で輸送され,$\delta$ の内側では粒子は分子のように熱運動すると考え,凝集定数 $K_{\mathrm{N}}$ を以下のように導出した。
$$
K_{\mathrm{N}} =2\pi D_{\mathrm{p}ij}(D_{\mathrm{p}i}+D_{\mathrm{p}j})\left[ \frac{D_{\mathrm{p}ij}}{D_{\mathrm{p}ij}+2g_{ij}}+\frac{8(D_{\mathrm{p}i}+D_{\mathrm{p}j})}{c_{ij}D_{\mathrm{p}ij}}\right]^{-1}
$$
ここで,$D$ は粒子のブラウン拡散係数であり,$g_{ij}$ は,以下で与えられる。
\begin{align}
& g_{ij} = \sqrt{{g_{i}}^{2}+{g_{j}}^{2}} \\[5px]
& g_{i} = \frac{(D_{\mathrm{p}i}+\lambda_{i})^{3}-({D_{\mathrm{p}i}}^{2}+{\lambda_{i}}^{2})^{1.5}}{3D_{\mathrm{p}i}\lambda_{i}}-D_{\mathrm{p}i}
\end{align}
ただし,$\lambda_{i}$ は $D_{\mathrm{p}i}$ の粒子の平均自由行程である。粒子の熱運動速度 $c_{ij}$ は,以下で与えられる。
\begin{align}
& c_{ij} = \sqrt{{c_{i}}^{2}+{c_{j}}^{2}}\\[5px]
& c_{i} = \sqrt{\frac{8kT}{\pi m_{i}}}
\end{align}
ここで,$k$,$T$,$m$ はそれぞれボルツマン定数,温度,粒子の質量である。
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