ブラウン凝集
Brownian coagulation
気相および液相中での微粒子の個数濃度が高くなると,粒子のブラウン運動による衝突合体すなわちブラウン凝集が顕著となり,これは高濃度の微粒子分散系ではきわめて重要な現象である。凝集の頻度を表わすブラウン凝集定数は,フックスの式で与えられる。微粒子が単分散で凝集速度が一定とすると,粒子の個数濃度 $n$ の減少速度は,次式で与えられる。
$$
\frac{\mathrm{d}n}{\mathrm{d}t} = -K_{\mathrm{B0}}n^{2}
$$
ただし,
$$
K_{\mathrm{B0}} =\frac{1}{2}K_{\mathrm{B}}(D_{\mathrm{p}},D_{\mathrm{p}})
$$
$K_{\mathrm{B}}(D_{\mathrm{p}},D_{\mathrm{p}})$ は,粒径 $D_{\mathrm{p}}$ の粒子同士のブラウン凝集定数で,このように等径の粒子では,
$$
K_{\mathrm{B0}} = C_{\mathrm{c}}\frac{4kT}{3 \mu}
$$
となる($C_{\mathrm{c}}$,$k$,$T$,$\mu$ はそれぞれ,カニンガムの補正係数,ボルツマン定数,絶対温度,粘度)。ブラウン運動する二粒子の接近・衝突過程には,ファンデルワールス力,静電気力などの粒子間力が作用する。$t=0$ で $n=n_{0}$ として,積分すると,時間 $t$ 後の $n$ は次の有名な Smoluchowski の式で表わされる。
$$
\frac{1}{n}-\frac{1}{n_{0}} = K_{\mathrm{B0}}t
$$
閉じた系内では粒子の質量は一定であるから,衝突によって瞬間的に新しい粒子ができるとすると,時間 $t$ 後の粒子の直径は,
$$
D_{\mathrm{p}} = D_{\mathrm{p0}}(1+n_{0}K_{\mathrm{B0}}t)^{1/3}
$$
となる。
実際には,粒子径に分布があるので,ブラウン凝集による粒子径分布の変化は,多分散粒子の凝集の基礎式である population balance 式を解かなければならないが,時間が十分に経過すると,幾何標準偏差が 1.3~1.5 の平衡粒子径分布関数に接近する。
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