粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

ミー散乱

Mie scattering

 グスタフ・ミー(Gustav Mie)は球形粒子による光散乱現象をマックスウェルの電磁方程式の厳密解として与えた(1908 年)。この解は任意の粒子屈折率(吸収性物質に対する複素屈折率でもよい),任意の大きさの球形粒子に適用される。解は球ベッセル関数群を含み複雑であるが,入射光の強度と入射方向を基準にして,粒子の周囲の散乱光強度を水平,垂直偏光成分別に与えている。主要な因子として粒子径,粒子の屈折率,入射光の波長があり,通常の条件であれば現在は数値計算で解を求めることができる。粒子径が光の波長より十分小さい場合(0.1 µm 以下)はレイリー散乱と呼ばれ,前後対称な繭型の強度分布を示す。粒子径が波長に等しいか波長の数倍の領域では,前方(入射光と反対方向)に強い散乱を示し,かつ周方向に散乱強度の変動(強弱)を示すようになる。この領域をミー散乱と呼ぶ。したがって,ミー散乱では粒子径の増加に対して特定方向の散乱光強度は単調増加しない。
 粒子の光散乱現象を利用した粉塵測定装置は多く,浮遊している粒子群の全体の散乱光量を質量濃度に変換する粉塵計や,個々の粒子の出すパルス状の散乱光を計数し粒子径別の個数濃度を与える光学粒子カウンターと呼ばれる装置が市販されている。
 また,ミー散乱を利用する粒子径分布測定法としてレーザー回折・散乱法がある。

→ 散乱光レーザー回折・散乱法

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/9/13

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