粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

ミストエリミネーター,ミストセパレーター

mist eliminator, mist separator, entrainment separator

 ガスや蒸気に同伴されている液滴を気流中から分離捕集する装置の総称であり,ミストセパレーターとも呼ばれる。硫酸や硝酸,リン酸ミスト,オイルミスト,塗料ミスト,タールミスト,海水滴,水滴など化学反応や蒸気からの凝縮,噴霧やガス吸収,クーリングタワーの飛沫同伴など液滴の物質,大きさ,発生源は広範である。

 微細な液滴の捕集には,繊維充塡層フィルターあるいは,衝突板式スクラバーべンチュリースクラバー,湿式電気集塵装置などの洗浄集塵装置が用いられる。一方,粗大な液滴の捕集には,ワイヤメッシュなどの充塡層慣性液滴分離器,かなり粗大なものについてはサイクロン重力沈降室などが用いられる。

 繊維充塡層フィルターが,微細ミスト捕集効率が最も高く,0.3 ~ 3 µm の液滴を定常的に,最大で 99.95 % の捕集が可能である。鉛直二重円筒状に金網を設置し,その間隙に繊維を充塡した構造のものが使用され,液滴を含む気流は円筒を外から内へ流れる。繊維層内で気流から分離捕集した液は繊維層を気流の力で速やかに通り抜けて円筒内面を重力により流下し,下方に集められる仕組みになっている。しかし,タールミストなど液滴の粘度が高い場合や固体粒子を含む場合には,捕集液の排出や目詰まりなどの問題が生じるため,洗浄集塵装置によらねばならない。設備コストは高いが,処理ガス量が多いときには鉛直に設置された集塵極表面に沿って上部から洗浄液を流しながら電気集塵を行う湿式電気集塵装置が使用される。

 5 µm 以上の大きさの低粘度液滴で固体を含まない場合には,ワイヤメッシュと呼ばれる 100 ~ 400 µm の太さのステンレスや樹脂の三次元織物(空隙率 95~99 %)の充塡層を用いるのが一般的である。また捕集効率は落ちるが,ラシヒリングや円管群を充塡層として使うこともある。

 液滴径が 15 µm を超えると慣性液滴分離器が多く使用される。慣性液滴分離器とは,流路中に多数の波型の板を平行に設置することによって流路を多流路に分割し,各流路をジグザグの流路とすることによって液滴を板に衝突させる方式の液滴分離装置であり,設備コストが安いので多用される。多くの形式の物が使用されているが,曲面を用いて流れを乱さないようにしたものは捕集効率が高く,圧力損失も低い。固体粒子を含む場合,あるいは反応の進行や温度低下のため固体が析出するような場合にも,洗浄液を間欠的に噴霧することによって制約はあるが使用可能である。

→ 洗浄集塵装置ミスト

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/9/13

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