粉体工学用語辞典 powderpedia: Glossary of Powder Technolog

一般社団法人粉体工学会

粒成長

grain growth

 多結晶物質を高温で加熱する際,その中の一部の微結晶が周囲の微結晶の物質をとり込んで成長する現象である。セラミックスや金属で一般に認められるものであり,その制御は微構造の設計,したがって望ましい材料特性の実現における非常に重要なポイントである。粒成長の駆動力は,粒子の成長にともなう表面や界面の全エネルギーの低下である。粒成長では粒界の一方の微結晶中の物質が粒界を横切って移動し,他の微結晶中にその構成物質としてとり込まれる。これにより一方の微結晶は収縮し最終的には消失するとともに,他は成長する。液相を含む系では,一部の微結晶は液相中に溶出し,それが他の結晶上に析出して粒成長が起きるが,これは微結晶間にはその形状や寸法により溶解度差が存在するためである。粒成長には正常粒成長と異常粒成長があり,前者では系の粒子径分布曲線は一定に保たれ,粒子径の平均値だけが時間とともに増加する。後者は,一部の微結晶のみが急速に成長するもので,材料の特性を著しく損なうものである。粒界の気孔や析出物などは粒界の移動を抑制し,異常粒成長を抑制する。粒成長が起きやすいのは,多結晶中の結晶が微細かつ気孔が少ない場合,すなわち高密度焼結体などである。一般に材料設計では添加物などにより粒成長を適切に制御することが非常に重要である。

→ 粒界

執筆者:粉体工学用語辞典
更新日:2021/8/10

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