臨界核
critical nuclei
気相,液相および固相の核生成において,後で粒子となる凝縮性物質の過飽和比 $S$ が高くなると,モノマーは互いに衝突・合体および脱離して,クラスターが形成される。 $g$ 個のモノマーからなる半径 $r_{\mathrm{p}}$ のクラスター(エンブリオ)が 1 個生成されるとき,ギブスの自由エネルギー変化,$\varDelta G$,は,古典的核生成理論では次式で与えられる。
$$
\varDelta G = g\varDelta \mu + s_{1} \sigma g^{2/3}
$$
ここで,$\varDelta \mu$ は母相から生成する粒子相への変化にともなう分子 1 個当たりの化学ポテンシャルの変化を,$s_{1}$ は分子 1 個の表面積を表し,$v_{1}$ を粒子相でのモノマー 1 個の占める体積とすると,$s_{1}$ は,
$$
s_{1} = (4\pi)^{1/3}(3v_{1})^{2/3}
$$
となる。$\sigma$ は母相と粒子相の界面エネルギーである。
一般に,$\varDelta G$ は図に示すように,モノマー濃度が末飽和の状態では,$g$ の増加とともに単調に増加し,大きなクラスターが生成されるのにより大きなエネルギーが必要となり,クラスターが発生しない。一方,過飽和の状態では,$\varDelta G$ は実線で示すように最大値をもつように変化する。この $\varDelta G$ が最大となるクラスターが臨界核と呼ばれ,
$$
\frac{\partial \varDelta G}{\partial g} = 0
$$
の条件より,臨界核の半径 ${r_{\mathrm{p}}}^{*}$ は次式となる。
$$
{r_{\mathrm{p}}}^{*} = \frac{2\sigma v_{1}}{kT\ln S}
$$
ここで,$k$ はボルツマン定数,$T$ は絶対温度である。古典的核生成理論では,過飽和雰囲気中ではこの臨界核より大きいクラスターが粒子となり発生すると考えられている。
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