レイリー・ガンス・デバイ理論
Reyleigh-Gans-Debye theory of light scattering
粒子の無限小部分がそれぞれ独立にレイリー散乱体として振る舞うとして導かれた,非常に弱い散乱体による光散乱の近似理論である。適用範囲は,散乱粒子の屈折率 $m$ ,粒子径パラメーター $\alpha = \pi D_{\mathrm{p}}/\lambda$ により $|m-1| \ll 1$ かつ $\alpha |m-1| \ll 1$ と表わされ,レイリーの散乱理論の粒子径 $D_{\mathrm{p}}$ が波長 $\lambda$ に比べて十分小さいという要件が緩和されている。無限小部分から観測点までの距離が,各部分の位置によって異なることに起因する散乱光の位相差 $\delta$ を考慮し,レイリー散乱理論の散乱関数を粒子の体積 $V$ にわたって積分することによって,散乱関数
$$
\left( \array{S_{1}(\theta) \\ S_{2}(\theta)} \right) = \frac{i}{2 \pi}k^{3} | m-1 | V R(\theta) \left(\array{ 1 \\ \cos \theta }\right) \tag{1}
$$
が導かれる。ここで,$k=\frac{2\pi}{\lambda}$ は波数である。$R(\theta)$ は形状因子と呼ばれ,以下のように与えられる。
$$
R(\theta) = \frac{1}{V}\int e^{i\delta}\mathrm{d}V \tag{2}
$$
(1) 式を球について積分することによって,均質な球に対する形状因子 $R(\theta)$ は以下のように求められる。粒子径パラメータを $\alpha$ として,
\begin{align}
u &= 2 \alpha \sin \left( \frac{\theta}{2} \right) \tag{3} \\[5px]
\delta &= zu \tag{4}
\end{align}
とおく。このとき,粒子半径を $a$ として,
\begin{align}
R(\theta) &= \frac{1}{V} \int_{-1}^{+1} e^{izu} \pi a^{2} (1-z^{2})a\, \mathrm{d}z \tag{5} \\[5px]
&= \frac{3}{2} \int_{0}^{1} \cos {zu}\cdot (1-z^{2}) \mathrm{d}z \tag{6} \\[5px]
&= \frac{3}{u^{3}} \left( \sin{u}-u\cos{u} \right) \tag{7}\\[5px]
&= \sqrt{\frac{9 \pi}{2u^{3}}}\, J_{3/2} \tag{8}\\[5px]
&= \frac{3}{u} j_{1}(u) \tag{9}\\
\end{align}
である。(7),(8),(9) 式は同じものの単なる式変形を表しているだけであるが,教科書等によって採用されている表式が異なるので参考のために全部書いておいた。ここで,$j_{n}(z)$ は第1種球ベッセル関数であって,第1種ベッセル関数 $J_{n}(z)$ に対して以下で定義される。
$$
j_{n}(z) = \sqrt{\frac{\pi}{2z}} J_{n+\frac{1}{2}}(z) \tag{10}
$$
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